埼玉県東部で40年にわたり地域密着型の急性期医療の実践を行っております

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診療科ご案内

代謝内分泌科

地域医療の現状と当科の活動概要

平成18年の全国保健医療統計によると、埼玉県は人口10万人に対する医師の人数(以下、医師数)が全国47都道府県の中で最も少ない。埼玉県は全国で5番目に県民の平均年齢が若い都道府県(平成20年現在)であるが、一方で高齢化が急速に進んでいることも知られている。急速な高齢化に対し、医療や介護、福祉サービスの整備は相対的に遅れており、現在においても地域のニーズに十分に対応できているとは必ずしもいえない。埼玉県は医療法により9つの二次医療圏に区分されている。当院が位置する利根二次医療圏は医師数が県内で二番目に少なく、糖尿病専門医も三番目に少ない。

さらに、平成20年度、同じ二次医療圏内の基幹病院の糖尿病専門外来が突然に休止となり、約1,200人の通院患者が通院先の変更を余儀なくされた。このように、当院の周辺地域は「深刻な医師不足」と「急速に進行する高齢化」といった二つの大きな医療問題に直面している。

平成20年度、当科では「地域に根ざした糖尿病医療の実現」を主要な課題と位置づけた。すなわち、保健所や診療所をはじめとする地域の医療資源との機能的な連携ネットワークを構築することにより、地域が協力して医師不足や急速に進行する高齢化に対応していく。さらに、この状況を変革の好機とみなし、これまで培ってきたチームの専門的知識や技術、経験を地域医療の中で生かしていくための新しい診療システムを整備している。

活動の詳細

次に平成20年度の当科の具体的な活動を、下記の(1)~(6)にまとめる。(1) 診療実績 (2) 地域連携ネットワーク構築と糖尿病・地域連携プログラムに関する活動 (3) スタッフ教育 (4) 研究・学術活動 (5) 講演活動・社会貢献 (6) 代謝内分泌科・糖尿病療養医療チームスタッフ

(1) 診療実績

(平成20年4月1日~平成21年3月31日、本年度より病歴データに基づき集計)
  糖尿病専門外来・入院
   糖尿病専門外来通院患者数:893名(全診療科では1,275名)
   糖尿病を主病名とした入院患者数:111名
   糖尿病を副病名とした入院患者数:564名
   地域連携・糖尿病教育プログラム: 計31名:院内21名、院外紹介10名
(平成20年10月開設)
   専門外来への他院からの紹介:135名
   糖尿病食事指導件数:外来 614件 入院 284件
   糖尿病生活指導外来受診患者数:フットケア外来 6名(平成21年3月開設)

糖尿病生活指導外来とフットケア外来 ~当院で最初の看護師による専門外来~

患者が正しいセルフケアを行いつつも、その負担を軽減できるように、平成18年度、看護師を中心とした糖尿病療養指導士(CDE :Certificated diabetes educator)が「糖尿病生活指導外来」を開設した。具体的な指導内容は、フットケア、外来でのインスリンや自己血糖測定の導入、インスリン手技などの療養上必要な知識や技術の確認、カウンセリングなどが挙げられる。

平成20年度より足病変予防を目的とした糖尿病合併症管理加算が算定可能となった。当院でも必要な資格取得のための研修を終了した看護師が、平成21年3月より公的医療保険により認められた専門的フットケア外来を開設した。当外来は当院における最初の看護師による専門外来である。対象患者は主に国際基準によるリスク分類によりスクリーニングされる。糖尿病足病変の予防のための指導や、フットケア、胼胝・鶏眼などの皮膚病変に対する処置、皮膚科や形成外科へのコンサルトなどを行い、患者の糖尿病足病変の発生や重症化予防に務めている。

今後の課題として、当外来の指導件数は徐々に増加してはいるが、さらに多くの患者に指導が行える体制を整えることが挙げられる。具体的には指導スタッフの育成と継ぎ目のない他科との連携などが挙げられる。最後に、当外来の開設のための研修や運営に関して、当院看護部より格別の配慮を賜った。

栄養指導 ~栄養指導件数は5年間で5倍に増加~

糖尿病は治療の98%が患者自身のセルフケアによって行われている。食事療法は糖尿病治療の基本であり、管理栄養士による栄養指導の重要性は言うまでもない。

東埼玉総合病院における栄養指導件数

当院における栄養指導件数(図参照)は、電子カルテが導入された平成16年度を基準の年度とすると平成18年度を境に急激な増加の一途をたどっている。平成16年度には289件であった栄養指導件数は、平成20年度には1,447件と5年間で約5倍に増加した。

これらの指導件数増加の要因として、平成19年度の外来個人栄養指導の定期フォローアップ制度の導入、医師の指示の元、次回指導の予約に関する権限を管理栄養士に部分的に委譲したこと、さらに糖尿病教育や減塩を目的とした目的別集団栄養指導の導入などの栄養科による業務改善が挙げられる。中でも平成19年度の集団栄養指導導入は、指導件数増加の大きな要因となっていたものと推察される。しかし一方で、集団栄養指導と同程度に、個人栄養指導においても指導件数の有意な増加が認められたことも特筆すべき傾向である。

平成19年度から20年度、当科では2型糖尿病患者120名を対象に、外来個人栄養指導の定期的フォローアップの血糖コントロールにおける効果の検討を行った。結果、対象患者の血糖コントロールは48週にわたり有意な改善を示した。

以上の結果は、近年の当院における栄養指導件数の増加は、単に集団栄養指導の導入によるものだけではなく、必要な患者には個人栄養指導も行われていたという見解を支持している。 さらに外来個人栄養指導の血糖コントロールにおける有効性が示されたことは、指導件数の増加に対して指導の質の低下を招くことなく、むしろ、多様できめ細かな栄養指導環境を患者に提供できるようになったことを示唆している。

最後に栄養指導における課題を述べる。栄養指導件数の急激な増加の一方で、平成18年度から管理栄養士は2名での体制が続いている。従来からの給食業務に加え、近年の食品安全管理や患者サービスに関する日常業務の増加、さらに栄養指導件数の増加など、業務量増加に伴う管理栄養士の負担への対応が今後の課題としてあげられる。当科には糖尿病患者によりよい治療環境を提供する責任がある。今後も効果的な栄養指導を継続していくためにも、管理栄養士の業務環境改善へ向けた提案を当チームからも行っていく必要があると考えられた。

(2) 地域連携ネットワーク構築と糖尿病・地域連携プログラムに関する活動

深刻な医師不足の中で地域医療を守るためには、医療施設が役割分担と連携をすることにより、あたかも一つの病院のように機能することが肝要である。

平成20年度、当科は栗橋町、幸手市、杉戸町、宮代町、春日部市の57カ所の診療所を対象に地域連携に関するアンケート調査を行い、40カ所の施設(70.1%)から回答を得た。その結果、75.0 %の施設は地域連携ネットワークの積極的な利用を考えていることが明らかになった。

さらに、地域連携ネットワーク構築のため、(1)地域連携・糖尿病教育入院プログラム(糖尿病合併症予防ブログラム三泊四日).(2)二人主治医制の試験的導入を試みた。

当科では平成20年度より、従来から行われていた糖尿病教室の内容を大幅に改定した。具体的には、従来型の講義形式や情報提供中心の糖尿病教室を最小限に減らし、行動医学や心理社会的アプローチを応用した実践的糖尿病教育プログラムを開発した。

プログラムは10のセッションから構成され、その内容は、1)動機付け、2)現実的で実行可能な目標設定、3)継続のための支援の求め方(心理社会的諸問題とソーシャルサポート)の3つに大別される。こうした様々な側面からのアプローチにより、患者のQOLを損ねることなく、自覚を持ちながら主体的に治療に取り込めるように支援し、最終的にセルフケアに関して患者を自立させていく。入院スケジュールは糖尿病療養指導士が実施主体となり進行される。

従って、当プログラムは、いわばコメディカル中心のチーム医療による新しい入院形式と言える。故に、この連携プログラムを実現できたのは、院内各部署の理解と支援の賜物である。

東埼玉総合病院地域連携ネットワークの概要

当プログラムは地域連携クリニカルパスにより、診療所から病院、さらに病院から診療所へと医療の連続性が確保されている。当院地域連携ネットワークの概要を左図に示す。  

教育入院だけでなく、外来栄養指導やフットケア外来、外来インスリン導入なども、地域ネットワークを介して他施設より簡便に利用できるようにした。実地医家の利便性を高めるために、我々は繰り返し試行錯誤を行った。紹介状を簡素化し、紹介の際の負担を軽減するように努めた。具体的な紹介基準を明記することで糖尿病を専門としない実地医家でも利用しやすいよう工夫した。退院後は原則として必ず紹介元へ逆紹介している。「顔の見える連携」を実現する為に、研究会や交流会を定期的に開催した。また、医師や地域ネットワーク職員などが定期的に診療所を訪問し、コミュニケーションを深めるように務めた。

二人主治医制とは文字通り患者一人に対し二人の主治医が担当する併診制度のことである。ここでいう二人とは、糖尿病専門医と実地医家のことである。この制度は、当院地域ネットワーク室での患者登録・管理と地域連携パスによるスケジュール管理や予約システムにより、従来の患者主体の計画的でない紹介・逆紹介による連携とは明確に区別されると考えている。

今後、当院だけでなく地域で患者を支えるシステム作りのために、1) 病院と診療所とを機能的に役割分担をすること(機能分化)や、インスリン導入のノウハウや糖尿病薬の使い方などの技術を伝えること(技術移転)、さらに住民の地域医療への参加が必要であり、これらを次年度への課題とした。また、地域の医療参加を目的として、保健所や地域のスポーツジムとの共同や連携、タウンミーティングの実施、循環型地域連携パスの導入へむけた準備が現在進行中である。将来的には、ITの活用による地域の施設間での情報共有と疾病管理を計画している。

その他の内分泌代謝疾患

その他、当科は甲状腺、副腎疾患、下垂体疾患においても入院・外来において診療を行っている。甲状腺疾患は主に外来を中心として加療を行っている。平成20年度は、治療に難渋した甲状腺クリーゼの1例も経験した。結節性甲状腺腫に関しては、当院乳腺内分泌外科の竹元伸行医師に協力をいただき、診療科の垣根を越えた院内連携診療を行っている。

副腎腫瘍の精査に関して、5日間のクリニカルパスを作成し、平成20年度は3名の患者の副腎腫瘍精査目的でのパス入院を行った。その他、電解質異常あるいは、本態性高血圧症と内分泌疾患に伴った高血圧症との鑑別を目的とした依頼も受けている。

(3) スタッフ教育

スタッフの診療レベルの向上は、当院や当科の発展のために必要不可欠な要素と考える。当糖尿病療養医療チームでは、これまでに6名の糖尿病療養指導士試験合格者を輩出している。受験の際には、勉強会や症例報告の指導を行ったり、資格更新のための支援も行っている。また平成20年度は、新たに2名が糖尿病専門医試験に合格した。

当科では単に知識や技術的な面だけでなく、人間性においても優れた医療スタッフを育成することを重視している。今後は、地域や患者のためにチームの中心となって活躍できる糖尿病認定看護師を誕生させることが重要な課題としてあげられる。

学会や論文発表などの学術活動も奨励しており、院内の活動や研究成果を全国へ発信できる能力を身につけられるように指導を行っている。当科では毎年、日本糖尿病学会年次学術集会へ参加し、3年連続で口演発表に選ばれている。また、米国糖尿病学会にも演題を出してる。

学会だけでなく、全国の先進的な施設から学ぶことも重視している。平成20年度は、千葉県立東金病院へ「わかしおネットワーク」とよばれるIT技術を駆使した地域連携ネットワークシステムの実際を学ぶために研修を行った。地域連携ネットワーク構築のためには、単なるIT技術の導入では不十分であり、人と人とのつながり、すなわちヒューマンネットワークの構築こそが何よりも重要であることを学んだ。

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